脳卒中センター

診療内容

脳卒中の対応につきましては、24時間365日対応いたします。

脳卒中の疑いで患者さまが搬送された場合には、問診と画像検査、採血他、様々な検査を行い、脳卒中の病型診断を行います。脳出血およびくも膜下出血については、入院後速やかに厳格な血圧の管理を行い、外科治療が必要な場合にはただちに進めていきます。脳梗塞であれば、その病型分類を行うと同時に、他に全身疾患がないかについての精査を進めていきます。また発症4.5時間の脳梗塞については院内各部署と連携し速やかに急性期血栓溶解療法(rt-PA治療)を行います。また発症後8時間以内の患者さまについては、血栓回収療法も行っております。
当センターでは毎朝入院患者のカンファランスを行い、脳卒中治療ガイドライン2015を基本とし、脳卒中はもちろん全身疾患の把握、生活習慣、社会背景などを見据えた一人ひとりにあった全人的医療を目指します。

脳卒中ケアユニット(SCU)

2011年に地区初のSCU(ストロークケアユニット、脳卒中治療ユニット)(3床)が開設しました。くも膜下出血、脳梗塞、脳出血といった脳卒中急性期の患者さんで、専門医療スタッフ(脳神経外科医・看護師・病棟薬剤師・理学療法士・作業療法士・言語療法士・医療相談員)による濃厚でかつ、きめ細かい治療をすることが可能となりました。

SCUで治療することで死亡率の低下、在院期間の短縮、自宅退院率の増加を図ることが出来ます。(Zhu et al, Stroke 2009)

また、早期(発症から24時間以内)にリハビリテーションを行う方がより良い機能回復が得られると言われており、当院でも積極的に早期からのリハビリテーションを行っています。(Berbgardt et al, Stroke 2008)

SCUに入室される条件は、脳卒中のうち、特に重症、あるいは症状の進行が予測される患者さんには、入室していただき管理を行います。2018年新病院オープン後、現在はSCUを6床で運用しています。

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超急性期脳梗塞に対するrtPA静注療法、脳血栓回収療法

・脳梗塞とは

・どんな症状があったら受診すればいいですか?

・梗塞から脳を守る再開通療法

・tPA(アルテプラーゼ)静注療法

・脳血栓回収術

・血栓回収療法の動画(ステント型、吸引型)

・脳梗塞治療は時間勝負!

・当院での時間短縮への取り組み

・治療実績

【脳梗塞とは】

・血の塊(血栓)などで脳の血管が閉塞するとすぐに、血流が届かなくなった領域の神経細胞が酸素不足、ブドウ糖不足で壊死し始めます。神経細胞が一旦死滅してしまうと脳梗塞となり、再生は通常困難であり、後遺症はほぼ確実に残ってしまいます。脳梗塞の場所によっては体の半分に力が入らない(麻痺)、言葉を理解したり話したりできない(失語)、自分の身体や空間を正しく認識できない(失認)、感情や行動がコントロールしにくい、など日常生活に大きな支障を来します。

【どんな症状があったらすぐ受診すればいいですか?】

最も多い症状は、語呂合わせでFAST:F(face:顔がゆがむ)、A(arm:腕が上がらない)、S(speech:言葉がもつれる、言葉が出なくなる、理解できなくなる)、T(time:時間、すぐに受診)で覚えてください。症状突然出ることが多いですが、数日かけて徐々に進行する場合もあります。他にも、まっすぐ歩けない(歩行障害)、片側が見えなくなる(視野障害)、急に行動がおかしくなる(失行)も脳卒中の症状である可能性があります。

【梗塞から脳を守る再開通療法】

神経細胞が死滅する前に、脳血管の閉塞を解除し、血流を再開させれば、脳梗塞を最小限にできる可能性があります。これが再開通療法です。ただし発症してから数時間以内に治療を始めなければ、良好な治療結果は得られにくくなります。再開通療法は主にrtPA静注療法(点滴)と脳血栓回収療法(血管内治療)の2種類があります。当センターはSCU6床、HCU4床を有しており、脳神経外科医が休日夜間も常駐し、脳卒中治療チームが24時間365日体制で迅速に内科治療・外科治療を開始できる体制にあります。

【rtPA静注療法】

rtPA(組織プラスミノーゲン活性化因子:アルテプラーゼ)は、脳血管に詰まった血栓を溶かす薬で、発症してから4.5時間以内ならば投与可能であり、点滴で治療できるのが特徴です。ご高齢の患者さんや軽症の患者さんにも、投与効果があると報告されています。また、投与が早ければ早いほど効果的です。(J-ACT2)ただし、過去に脳出血の既往をお持ちの方、消化管などの出血の病気をお持ちの方や、すでに抗凝固薬(ワーファリンなど)を内服中の方には投与できない場合があります。

【脳血栓回収療法】

脳血栓回収療法は、rtPAでは溶かしきれないような大きな血栓に対して行われます。また、出血や内服が原因でtPAが投与できない患者さんに対しても行える場合があります。鼡径部または上腕の動脈から細い管(カテーテル)を入れて治療を行い、閉塞箇所の血栓を体外に回収する方法です。

【脳血栓回収療法の動画】

・血栓をステントで絡めとる方法

・血栓を吸引する方法

【血栓回収療法の有用性】

近年の治療器具の発達に伴い、海外の複数の臨床試験で、内頚動脈や中大脳動脈の閉塞に対し血栓回収療法が有効であることが証明されました。アメリカの最新のガイドライン(AHA,ASA2018年)では、条件が整えば内頚動脈、中大脳動脈の閉塞に対してrtPAを投与開始すると同時に血管内治療を開始するよう、強く推奨されており、日本の多くの脳卒中センターもそれに従って治療が行われています。現在では、症例によっては発症から24時間以内であれば血栓回収療法の適応となる可能性があります。(DAWN trial 2018)

【当院での血栓回収療法】

2014年11月よりステントリトリーバー(Solitaire, Trevo, EmbotrapⅡ, Tronなど)、2016年7月より吸引型カテーテル(Penumbra, Sofia, REACTなど)の血栓回収器具を導入し、それぞれの特性を生かして症例ごとに使い分けています。ステント型は固い血栓も回収しやすい利点がある一方、血管内皮を傷つけやすく、高齢で動脈硬化のある患者さんに対しては、なるべく血管損傷のリスクを抑えるため、吸引型の器具を併用することもありす。それにより、これまで治療困難だった血管に対しても比較的安全に治療を行うことができるようになりました。

下図は、当院で経験した右内頸動脈閉塞症例。tPA静注だけでは再開通しにくい症例です。tPA開始後、直ちに血栓回収術を行い、ステント型リトリーバーを用いて良好な再開通が得られました。