デフアスリートに学ぶ、障害理解とコミュニケーション

「伝える」から「伝わる」へ。
相手に合わせたコミュニケーションを考える。
当院では、患者さんやご家族に安心して医療を受けていただけるよう、職員教育の一環としてホスピタリティの向上に取り組んでいます。
特に、さまざまな事情からサポートを必要とされる方への対応や、障害への理解を深めることは、誰もが安心して受診できる医療環境をつくるうえで大切なことです。
今回は、東京2025デフリンピックのバドミントン女子ダブルスで金メダルを獲得された、矢ケ部紋可(やかべ あやか)さんを講師にお迎えし、職員研修を行いました。
当日は40名の職員が参加しました。


デフリンピックでの経験から学ぶ
矢ケ部さんからは、デフリンピックでの経験だけでなく、聴覚障害のある方が日常生活の中で感じる困りごとや、医療機関を利用する際に「嬉しかった対応」について、ご自身の経験を交えながらお話しいただきました。
普段、私たちが当たり前だと思っていることでも、人によっては不便や不安につながることがあります。
「どうすれば安心してもらえるだろう」
「どのように伝えれば、きちんと伝わるだろう」
相手の立場に立って考えることの大切さを、具体的な経験を通して学ぶ機会となりました。


コミュニケーションは「伝える」だけではない
講演では、手話も教えていただきました。
実際に手を動かして体験することで、言葉だけではないコミュニケーションの方法に触れることができました。
医療の場では、診察や検査、入院生活など、患者さんにさまざまな説明を行います。
そのとき大切なのは、医療者が「説明した」ことだけではありません。
患者さんに「伝わったか」「理解できたか」「安心できたか」。
相手の反応を見ながら、必要に応じて伝え方を変えていくことも、医療における大切なコミュニケーションの一つだと改めて感じました。


「配慮」に正解は一つではない
今回の講演で、特に印象に残ったのが、矢ケ部さんからいただいた次の言葉です。
配慮は正解を決めることではなく、その人に合った方法を一緒に探すこと
障害があるからといって、必要なサポートがすべて同じとは限りません。
手話がよい方、筆談がよい方、口元を見ながら話すことを希望される方など、コミュニケーションの方法は一人ひとり異なります。
だからこそ、「きっとこうだろう」と決めつけるのではなく、まず相手の希望を聞き、その人に合った方法を一緒に考える。
この姿勢は、障害の有無にかかわらず、すべての患者さんと接するときに大切なことだと考えています。


金メダルに込められた努力にも触れました
講演後には、矢ケ部さんの金メダルを実際に手に取らせていただく機会もありました。
想像していた以上の重さに驚く職員も多く、世界の舞台で挑戦を続けてきた努力の重みを、実際に感じることができました。
また、講演後には矢ケ部さんと職員との交流も生まれ、会場には自然な笑顔が広がりました。
知ること、体験すること、そして直接言葉を交わすこと。
こうした経験そのものが、障害への理解を深めるきっかけになりました。




「寄り添う」とは、相手を知ろうとすること
今回の研修を通して、職員一人ひとりが「寄り添う」とはどういうことなのかを考える機会となりました。
医療機関には、年齢や身体の状態、生活背景、コミュニケーション方法など、さまざまな患者さんが来院されます。
すべての方に同じ対応をするのではなく、一人ひとりの声に耳を傾け、その方に合った方法を一緒に考える。その積み重ねが、患者さんの「ここなら安心して相談できる」という気持ちにつながるのではないでしょうか。
当院ではこれからも、医療の知識や技術だけでなく、人と人とのコミュニケーションを大切にしながら、患者さん一人ひとりに寄り添った医療・サービスの提供を目指してまいります。


ご来院の際に、サポートが必要な方へ
受診や入院にあたり、コミュニケーションや移動などについて不安なこと、配慮してほしいことがありましたら、遠慮なく職員へお知らせください。
「どう伝えればいいかわからない」という場合も、まずはお困りのことをお聞かせください。
患者さんにとって安心できる方法を、一緒に考えていきます。



