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子どもの便秘 シリーズ2

小児外科コラム04
目次

発症時期からこどもの便秘を考えましょう・便秘の悪循環

先月号のおさらいをお願いします。

先月は、こどもが便秘を発症しやすい時期として、①生後3カ月までの赤ちゃん、②離乳期の乳幼児、③幼児におけるトイレットトレーニング、④学童における通学の開始や学校での排泄の回避の4つの時期を挙げ、①②について解説しました。微妙なバランスの上で排便メカニズムが維持されている幼少期の子どもたちは、特に季節の変化で調子を崩しやすいと述べました。
今月号では③④の時期に生じやすい「便秘の悪循環」について重点的に解説します。

トイレットトレーニング期の便秘の原因は?

この時期の幼児は食事内容が大人と変わらなくなり排便が1日1回程度となります。便も大人と同様に形が整ったある程度の大きさになります。食事や天候の影響などで便が滞りがちになり太く硬い便を排泄すると排便痛や肛門裂傷をきたします。このため子どもは排便をがまんするようになり、便の停滞時間がさらに長くなります。このことが便から腸管への水分の再吸収を助長し、更に硬い便が貯留し、悪循環が繰り返されます。習慣的に便が腸管内から十分に排泄されないため次々と雪だるま状に直腸に便塊が貯まってくると、直腸は拡張し便意が消失します。履き古したパンツの弛緩したゴムひものように直腸が伸び切り収縮性が消失します。すると直腸内にはさらに多量の便塊が長時間停留することととなり直腸の拡張が増悪します。この直腸の拡張を伴った悪循環へ陥ると治療に難渋し長期化することになります。

大人でも出血や痛みがあることはありますが、子どもの場合は我慢できないものなのでしょうか。

乳幼児期に硬い便や太い便を排出したときの痛みや不適切なトイレットトレーニングなどは、排便を我慢した結果の嫌な体験として記憶されます。すると便意を感じても意図的に肛門周囲の筋肉を引き締め、排便をしばしば回避するようになります。このため、便秘の悪循環が生じ、慢性便秘となります。一方、多くの大人や年長児では排便することですっきりするというイメージを持っているので多少の出血や痛みで排便をがまんすることはありません。排便の不快さより排便への欲求が勝り排便を遂行できるのです。

この時期の便秘の治療法は?

2歳を過ぎると浣腸や坐薬の使用を嫌がるようになります。刺激性のある下剤を用いたり、下剤に抵抗性の場合には短期間に連続して浣腸や坐薬を施行したりして直腸に停滞した硬い便を強制的に排泄させることが重要です。その間にしっかりと緩下剤を内服し新鮮で軟らかい便になるように努めます。スムーズな排便を繰り返すことで子どもは自信を取り戻します。一度便秘でトラウマになった心は再び悪化しやすいものです。一過性に良くなったからと内服を中断せずに1、2年は内服を続けます。4、5歳になると多少の痛みには耐えられ、排便を行った方がすっきりすると理解できるようになります。

学童期の便秘は?

幼少期に適切な便秘治療が行われていないまま過ごすと最重症型としては遺糞症として発症します。便意を感じる力を失った直腸内に巨大な便塊が貯留してしまいます。巨大な便塊が胃や横隔膜を圧迫していることもあります。緩い便が腸の壁と便塊のわずかな隙間を通って肛門から漏れ出るためにパンツが汚染されます。学童期に入ると、学校生活という社会生活場において悪臭のために正常な社会生活を送れなくなります。少量の便が下着に付着していることから便が出ていると勘違いされ、重症な便秘症が原因であると診断が下されるまで時間を要することがあります。
その他多くは、意図的に排便を回避することで発症します。最近では、タブレットの動画やゲームに夢中になるあまりトイレを我慢する事例が増加しています。学校内でのうんちに関する無理解、いたずらなども原因です。怪談話(トイレの花子さん)などで恐怖心を植え付けてしまうことも時に原因として認められます。家庭内では声かけ、学校生活では安心して排便できる環境を整えることが大事です。
小学校高学年から中学生になると、二次性徴に伴って心身の変化も出現してきます。幼少期に見られた便秘が改善傾向を示す一方、心身のリズムから便秘を発症する子も見られるようになります。このころの便秘は腸管の過度の緊張(攣縮)が原因です。腹痛を繰り返し訴えることで不登校になるなどして受診する方がほとんどです。宿便の量はそれほど多くないために便秘との診断が下されないことがあります。腸管の負担を軽減する緩下剤、腸管の攣縮を緩和する腸管機能調整剤を用います。

親として注意するべきことは?

便秘を軽く見ないことが重要です。排泄は人間が社会生活を円滑に営むために最も早く身に着ける所作(マナー)です。育児の中で食べさせることと同程度に重要です。わが子の排便に困ることがあれば近くの小児科医を受診しましょう。医師にも得手不得手があります。適切な治療が行われれば排便で困ることはありません。治療を受けていても排便で困るようなことがあれば、小児外科医に受診することをお勧めします。居住する医療圏に一人は必ずいると思います。

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