TMGあさか医療センター 歯科口腔外科

取り扱い疾患

口腔がん

口腔にもがんができます。口腔がんは全てのがんのうち1%と言われていますが、年間2万人以上が罹患する疾患です。
口腔がんはほとんどが扁平上皮癌といわれているものです。その他にも他部位からの転移や、肉腫、悪性リンパ腫など悪性腫瘍が生じます。
口腔がんは部位によって下記のように分類されています。
また、よくStage分類を聞くと思いますが、こちらは腫瘍の大きさ、頸部リンパ節への転移、多臓器への転移などを踏まえて分類されています。

舌がん
下顎歯肉がん
上顎歯肉がん
口腔底がん
頬粘膜がん

治療法

口腔がんの治療法には、手術療法、放射線療法、化学療法が標準治療としてあります。切除可能であれば手術療法が基本となりますが、近年は化学療法も抗癌剤のほか、分子標的治療薬なども出てきております。
当院では、手術療法、放射線療法、化学療法対応可能ですが、がんの大きさや種類によっては、当院でも対応困難な場合がありますので、その場合は高次医療機関に紹介させていただくことがあります。

良性腫瘍

口腔内にできる腫瘍は大きく分けて歯原性腫瘍と非歯原性腫瘍があります。

歯原性腫瘍

歯原性腫瘍は歯の形成に関する細胞に由来する腫瘍で、エナメル上皮腫や歯牙腫などがあります。

エナメル上皮腫

エナメル上皮腫は歯原性腫瘍の中で最も多い腫瘍です。ほとんどが顎骨内に生じます。自覚症状がなく、X線で発見されることが多いですが、徐々に大きくなると、顎の形が変形してきます。

治療法

エナメル上皮腫は摘出することが基本ですが、腫瘍が大きくなると顎を離断することがあります。

※反復処置法

エナメル上皮腫のように再発しやすかったり、腫瘍が大きく骨を離断する必要があるような良性の疾患の場合、腫瘍を完全に摘出せずに開放創にすることで、腫瘍は縮小します。この処置を反復することで、徐々に腫瘍を小さくしてから摘出します。この処置を行うことで、顎の変形を防ぐことができます。

①初診時
②1回目術後
③2回目手術後
④3回目手術後
①初診時
②3回目手術後
歯牙腫

歯牙腫は腫瘍の中に歯のような組織が含まれているもので、多数の歯牙よう組織を含むものが集合性歯牙腫、明らかな歯のような組織の塊が含んだものが複雑性歯牙腫と言います。

治療法

歯牙腫は摘出することが基本です。しかし、自覚症状がなく、周囲の組織に影響がない場合はそのまま経過観察することもあります。

非歯原性腫瘍

非歯原性腫瘍は歯とは関係のない良性腫瘍で血管腫や線維腫などがあります。歯原性腫瘍は顎骨内にできることが多いですが、非歯原性腫瘍は顎骨内以外にできることが多いです。

血管腫
脂肪腫
線維腫
乳頭腫

治療法

非歯原性腫瘍は摘出や切除することが基本ですが、血管腫の一部では硬化療法や凍結療法、レーザー照射などがありますが、当院では手術療法のみ行なっております。

口腔粘膜疾患

口腔粘膜は粘膜上皮と粘膜固有層からなり、皮膚と基本的には構造は一緒です。口腔粘膜疾患は、口腔粘膜に白斑や水疱、びらん、潰瘍などが見られる疾患です。病変が咀嚼などの影響で、同一病変でも一定の症状を示さず、経過によって異なった症状を示すことがあります。

白板症

白板症は舌や歯肉、頬粘膜などに生じる白色の病変です。前がん病変とも言われ、がん化することもあります。

治療法

白板症は悪性ではないため経過観察することが多いです。しかし、前がん病変のため、病変の一部を採取して病理検査を行う生検を行い、病理診断しておく必要があります。病変の大きさや、程度によっては、全てを切除する切除生検を行うこともあります。

扁平苔癬

扁平苔癬は口腔粘膜に生じる角化を伴う炎症性病変です。レース状の白斑を呈するのが特徴です。原因は不明ですが、金属アレルギーとの関連も言われています。

治療法

副腎皮質ステロイド軟膏などの局所塗布などを行いますが、金属アレルギーとの関連が疑われる場合は、口腔内金属の除去を行なったりします。

口腔カンジダ症

口腔粘膜にカンジダ(真菌;カビ)により白苔が生じたり赤くなったり生じます。カンジダは口腔内に常にいる真菌ですが、免疫力の低下や抗菌薬の投与などで生じる日和見感染で発症します。

治療法

カンジダは真菌ですので、抗真菌薬の軟膏や含嗽剤、貼付剤などの局所投与を行います。また、口腔内の衛生状態が不良でも生じるため、口腔衛生状態の改善が必要です。

ウイルス性疾患

口腔内には様々なウイルスにより口腔粘膜症状が生じます。ヘルペス性口内炎(単純性ペルペス)、帯状疱疹(水痘帯状疱疹ウイルス)、手足口病(コクサッキーウイルスA16)、ヘルパンギーナ(A群コクサッキーウイルス)などがあります。多くは水泡形成し疼痛を伴いますが、疾患ごとに発症する部位などに特徴があります。

治療法

ヘルペス性口内炎や帯状疱疹などは抗ウイルス薬の投与を行いますが、多くは疼痛コントロールなどの対象療法を行います。症状が強いと口腔ケアも困難になることから、2次感染にも注意が必要なので、口腔衛生状態を良好に保つ必要があります。また、経口摂取も困難になるため、栄養管理や輸液管理が必要になることがあります。

口腔乾燥症

口腔乾燥は口腔内の唾液量の低下により生じます。唾液の量の低下は、唾液の分泌量の低下や唾液の質的変化によるものや、唾液の分泌量は減少していない場合があります。唾液の分泌量の低下の原因の多くは薬剤性によるものです。その他に、放射線治療などにより障害されたり、精神的な要因で減少したりします。

検査法

唾液は刺激によって分泌される刺激唾液と、刺激がなくても分泌される安静時唾液があります。当科では刺激唾液をサクソンテスト、安静時唾液を口腔水分計ムーカス®️で測定しています。

  • サクソンテスト:
    規定の大きさのガーゼを2分間咬んでもらい、ガーゼに含んだ唾液の重さを測定する。(2g /2分以上)
  • 口腔粘膜湿潤度:
    口腔水分計ムーカス®️を用い、舌尖から10mmの舌背部にあて測定する。(26%以上)

治療法

口腔乾燥症の治療は、原因に対する対応が基本です。問診で病状や病歴から原因を突き止め、対応します。また、漢方薬(白虎加人参湯、麦門冬東など)やピロカルピン塩酸塩、セビメリン塩酸塩などを投与することがあります。

※シェーグレン症候群

シェーグレン症候群は自己免疫疾患で難病に指定されています。シェーグレン症候群患者は口腔乾燥や目の渇きなどを訴えます。当院ではシェーグレン症候群の検査として、血液検査(抗SS-A抗体、抗SS-B抗体)、サクソンテスト、口唇腺の生検、唾液腺シンチグラフィを行なっています。

嚢胞性疾患

嚢胞は病的にできた袋状の疾患です。顎骨内にできるものと軟組織にできるものに分けられます。また歯に由来する歯原性嚢胞と由来しない非歯原性嚢胞に分けられます。

顎骨内にできる嚢胞

歯根嚢胞

う蝕などにより歯髄が感染すると、歯根の先に炎症が生じ、膿瘍を形成します。それが慢性化すると歯根嚢胞が生じます。顎骨内に生じる嚢胞で最も貧打が高いものです。

治療法

基本的に摘出を行いますが、小さい場合などは根管治療で治癒することもあります。原因歯に関しては、抜歯するか、もしくは感染している歯根を切除する、歯根端切除術を行います。

含歯性嚢胞

歯胚の上皮組織が嚢胞化することにより生じる嚢胞で、顎骨内に生じる嚢胞では、歯根嚢胞に次いで多いものです。嚢胞腔内に埋伏した歯の歯冠を含みます。

治療法

嚢胞の摘出と埋伏した歯を抜歯します。

歯原性角化嚢胞

歯原性角化嚢胞は歯胚の組織が嚢胞化して生じるとされています。再発しやすい嚢胞で、以前は腫瘍として分類されていました。

治療法

基本的に摘出が行われますが、腫瘍が大きい場合などは、開窓療法や反復処置法が行われます。

軟組織にできる嚢胞

粘液嚢胞

口腔内には小唾液腺が多数分布しています。唾液腺からの管が何かしらの刺激で閉塞することにより、唾液が貯留して生じます。

治療法

粘液嚢胞は摘出が基本となりますが、貯留した唾液が自壊して漏出し、自然に消失することがあります。

類皮嚢胞・類表皮嚢胞

皮膚と同じような組織で形成される嚢胞で、毛や皮脂腺、汗腺などが含まれたものを類皮嚢胞、表皮のみからできているものを類表皮嚢胞といいます。

治療法

摘出することが基本です。

唾液腺疾患

唾石

唾液腺や唾液腺の導管内に石(唾石)ができることがあります。小さければ自然に放出されることもありますが、大きいと唾液の分泌障害が生じ、食事の際に顎の下が腫れたりすることがあります。また感染することがあります。顎下腺に生じることが多いです。

治療法

基本的には摘出します。そのまま放置していると、徐々に大きくなることがあります。摘出は口腔内からアプローチをしますが、唾石が腺体内にある場合は、顎下腺ごと摘出することがあります。唾石が小さい場合は自然放出も期待できるので経過観察することがありますが、分泌障害などの症状がある場合は摘出します。

ガマ腫

舌下腺から分泌された唾液が口底部の粘膜下に貯留して生じた、大きな水泡状の嚢胞です。

治療法

治療法には嚢胞を口底に開放し内部の唾液を漏出させる開窓術、原因となっている舌下腺ごと摘出する摘出術などの手術療法と、薬物を嚢胞内に注入する薬物注入療法などがあります。また、粘液嚢胞同様に内部の唾液が漏出すると消失することもあります。

※薬物注入療法

当院ではガマ腫の治療法として薬物注入療法を行なっています。ガマ腫に薬剤を注入させ、炎症を起こすことで漏出している部分が閉鎖して縮小させる方法です。ペニシリンを用いているため、ペニシリンアレルギーのある場合は使用できません。また、1回の注入で効果が出ることもありますが、何回か治療が必要な場合があります。

唾液腺炎

口腔内には多数の細菌が存在するため、唾液の分泌量が少ない場合など、導管を逆行して口腔内の細菌が唾液腺に感染してしまうことがあります。また、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)のようにウイルス感染で生じることもあります。

治療法

細菌による感染の場合には抗菌薬の投与を行います。ウイルス感染の場合には、安静にし、解熱鎮痛剤の投与などが行われます。

唾液腺腫瘍

唾液腺にできる腫瘍は耳下腺が最も多いですが、顎下腺のや小唾液腺などにも生じます。一般に唾液腺にできる腫瘍は良性のものが多いですが、悪性のものも生じることがあります。

多形成腺腫

治療法

良性腫瘍も悪性腫瘍も基本的に手術で切除を行います。悪性腫瘍の場合も、口腔がんとは違って、見た目では判別できないため、術前に画像の評価や針生検などを行う必要があります。

外傷

顎顔面領域は交通事故、転倒、暴力、スポーツなど様々な要因で外傷が生じます。その内容としては軟組織損傷や骨折、歯の外傷があります。顎顔面領域の外傷は審美的な問題だけでなく、咀嚼など機能障害も生じます。

顎骨骨折

顎顔面領域の骨折の中で、下顎骨骨折が多くを占めます。その他に、上顎骨骨折、頰骨骨折、鼻骨骨折などが見られます。いずれも顔面の変形や開口障害などの症状が生じるため、早急な治療が必要となります。

観血的整復固定術
非観血的整復固定術

観血的整復固定術の場合、6か月後金属プレートを除去する必要があります

治療法

顎顔面骨折に対しては、骨折部をもとに戻し固定する必要があります。戻す方法は手術で戻し金属プレートなどで固定する観血的整復固定術、手術はせずに顎間固定を行う非観血的整復固定術があります。

歯の損傷

完全脱臼

歯のソケットから完全に脱落した状態です。歯根膜があれば戻る場合があります。生着しない場合は抜歯が必要となります。

不完全脱臼

歯のソケットから完全に脱落せず、一部ずれた状態です。戻して生着すれば問題なく使用できます。歯髄が壊死することがあります。

歯の破折

歯が歯根や歯冠で破折したものです。歯根破折の場合抜歯になることが多いですが、歯冠破折の場合、修復や補綴の処置で残すことができる可能性があります。

炎症

歯性感染症

歯性感染症とは、歯の疾患(虫歯や歯周病)が原因で感染を起こし、炎症が周囲組織に波及した疾患です。症状は発赤、発熱、腫脹、疼痛を伴うことが多く、重症化すると、敗血症(感染して発症した全身性炎症性症候群)になり死に至ることもあります。

1群:歯周組織炎

歯髄感染から起こる根尖性歯周組織炎と辺縁性歯周組織炎(歯槽膿漏)があります。これらが原因となり、歯肉膿瘍、歯槽膿瘍、口蓋膿瘍などを形成します。

2群:歯冠周囲炎

主に埋伏智歯が原因です。埋伏智歯の歯冠周囲に、発赤、腫脹、排膿が認められます。歯冠周囲炎が原因で顎炎、蜂巣炎に炎症が進展することがあります。炎症が顎骨周囲の隙に波及すると開口障害、嚥下痛が認められます。

3群:顎炎

1群の歯周組織炎、2群の歯冠周囲炎から波及する骨炎および骨髄炎が含まれます。1群および2群に比べて重症で、骨膜下のドレナージおよび注射用抗菌薬を使用する症例が多いです。骨髄炎は、急性、慢性、硬化性があり、下顎骨に多く発症します。

4群:蜂巣炎

1群~3群から炎症が波及します。舌下隙、顎下隙、オトガイ下隙、翼突下顎隙、側咽頭隙、咽頭隙などの隙感染症を含みます。隙のドレナージが重要です。注射用抗菌薬を使用する症例が多い。

改)JAID/JSC感染症治療ガイドライン2016 ―歯性感染症―

治療法は、基本的に膿瘍の切開と抗菌薬の投与を行います。重症な場合は呼吸器管理が必要なこともあります。

上顎洞炎

上顎洞炎(蓄膿症は)鼻が原因のものと歯が原因のものとがあります。歯が原因のものは、う蝕や歯周病といった歯の炎症が、接している上顎洞内に炎症が波及することで生じ、歯性上顎洞炎と言います。

治療法

歯性上顎洞炎の場合、原因となった歯の治療を行う必要があります。原因歯が残せない場合は抜歯を行い、抜歯窩から上顎洞洗浄を行うことがあります。また、原因歯の治療と合わせて、鼻からの治療が必要な場合があるため、耳鼻咽喉科との連携が重要です。

顎骨骨髄炎

歯性感染症などにより炎症が顎骨に及んだものです。上下顎骨に生じますが、下顎骨に多く見られます。原因となった歯が動揺したり、顎や口唇の麻痺が生じることがあります。また、悪性腫瘍に対して行った放射線治療、悪性腫瘍の骨転移や骨粗鬆症に対して使われる骨吸収抑制剤の影響で生じることがあります。

治療法

炎症のため原因菌に対する抗菌薬の投与を行います。当院では抗菌薬の治療効果を上げるため高気圧酸素療法を併用することがあります。また、骨髄炎が進行し、腐骨を形成した場合は腐骨除去を行います。

※骨シンチグラフィー

骨髄炎の診断にはCT、MRI、骨シンチグラフィーが用いられます。当院では骨シンチグラフィーを撮影する際に骨SPECT検査を行ない、より骨髄炎部分を明確に診断しています。

※骨吸収抑制剤関連顎骨壊死

骨粗鬆症や悪性腫瘍の骨転移の場合、骨吸収抑制剤の投与が行われることがあります。骨吸収抑制剤が投与されている場合に、顎骨内に炎症などが生じると、顎骨壊死が発症することがあります。
顎骨壊死が生じると、顎の一部が腐骨となり露出してきたり、皮膚に瘻孔が出てきたりします。
治療法は顎骨壊死部分を外科的に切除しますが、広範囲で切除困難な症例や、症状が軽度で口腔管理のみで経過観察することもあります。
骨吸収抑制剤関連顎骨壊死は難治性なことが多いため、発症しないように、骨吸収抑制剤が投与される前に、口腔内に感染所見をなくしておく口腔管理が重要となります。

顎関節疾患

顎関節症

顎関節症とは、あごの関節や咀嚼筋(あごの周りの筋肉)の痛み、開口障害(口が開きにくい、開かない)、関節雑音(あごの関節の音がする)などの症状を主とする慢性疾患の診断名です。

治療法

治療法は原因の除去が基本となりますが、生活習慣の改善やマウスピースの装着、筋のマッサージや開口訓練等のリハビリを継続的に行うこともあります。

顎関節脱臼

あくびなどの大きな開口をした時などに、下顎骨の関節突起が関節から外れて、戻らなくなる状態です。自分で戻すこともできることもありますが、繰り返して習慣性に顎関節脱臼を起こすことがあります。

治療法

治療法は徒手的に外れた顎関節を戻します。その後は再脱臼し易いので顔面にバンドなどを巻いて、強制的に開口しないようにすることもあります。習慣性顎関節脱臼の場合は手術を行うこともあります。また、自分の血液を顎関節部に注入する自己血注入療法を行うことがあります。

神経疾患

顎顔面領域には三叉神経や顔面神経などの重要な神経があります。それらの神経が外的侵襲や疾患等により麻痺や疼痛が生じることがあります。

三叉神経麻痺

三叉神経は目付近の知覚に関する眼神経、上顎の知覚に関する上顎神経、下顎の近くに関する下顎神経があります。手術や外傷、炎症などにより神経に麻痺が生じることがあります。

治療法

手術等で神経が切断してしまった場合は、麻痺の改善は望めません。神経吻合が可能な場合は神経吻合術を行うことがあります。炎症により生じた場合は、消炎治療などの原因疾患への対処を行ないます。また、ステロイドやビタミンB12などの投薬を行ないます。

三叉神経痛

三叉神経痛は特発的に生じることが多く、顔を洗っているときや髭を剃っているときに疼痛を自覚することがあります。歯や上顎洞の炎症により生じることがありますが、脳腫瘍や脳血管疾患が三叉神経を圧迫して生じることがあります。

治療法

炎症が原因の場合は消炎なのど原疾患の治療を行ないます。
頭部の疾患の影響が疑われる場合は、脳血管治療が必要なことがありますので、脳神経外科にコンサルトします。頭部に問題ない場合は、抗てんかん薬などの投薬治療を行ないます。

※精密触覚機能検査

三叉神経に何らかの原因で機能障害が生じ、感覚の異常をきたす病態を三叉神経ニューロパチーと言います。原因となる病態には、外傷(手術や歯内療法等の歯科治療を含む)、帯状疱疹やHIV感染、骨髄炎等の炎症性疾患、三叉神経痛や多発性硬化症等の神経疾患、聴神経腫瘍等の空間占拠性病変、顎骨腫瘍や転移性腫瘍等があります。
当院では、三叉神経ニューロパチーの診断に必要な精密触覚機能検査を行なっています。精密触覚機能検査は特殊なフィラメントを対象部位に接触させ閾値を測定する方法です。精密触覚機能検査を行うことで、三叉神経ニューロパチーの診断を行ない、治療につなげることができます。

舌痛症

舌痛症とは口の中のヒリヒリ、カーッとした痛みまたはピリピリした不快な異常感覚が、1日に2時間以上で3カ月以上にわたって連日繰り返すもので、臨床的に明らかな原因疾患を認めない病態とされています。

検査

当院ではまず器質的疾患がないか口腔内の診査を行います。病歴等を問診で聞き取り、スクリーニングで口腔内細菌検査、口腔粘膜湿潤度の測定、血液検査を行います。また、適宜必要な検査を行います。

治療法

原因が特定できれば、それに対する加療を行います。
原因が特定できない場合は、薬物療法を行います。症状によっては、専門医療機関に紹介することがあります。

発育・形態異常

小帯異常

舌小帯短縮症

舌小帯は舌と口腔底とを結ぶヒダ状の組織です。舌小帯が短縮していると舌が出にくくなりハート状になります。その結果、発音などに影響が出ることがあります。

治療法

舌小帯を切開し、伸展させる手術を行います。
障害が出ていなければ、経過観察することもあります。

上唇小帯付着異常

上唇小帯は上唇と上顎歯肉を結ぶヒダ状の組織です。上唇小帯が上顎歯肉の歯槽頂付近で付着していると、右上中切歯と左上中切歯との間に隙間が開いてしまいます。また、歯ブラシでブラッシングする際に疼痛が生じることがあります。

治療法

上唇小帯を切開し短縮させます。可能であれば、上顎前歯が乳歯から永久歯に萌え変わるまでに手術した方が良いです。

骨隆起(下顎隆起・口蓋隆起)

骨隆起は下顎や口蓋の骨が病的に腫大したもので外骨症とも言われます。大きいと咀嚼障害や構音障害、義歯の装着が困難になることがあります。

治療法

基本的に隆起部を切除する手術を行ないます。
機能障害や義歯に影響しない場合は経過観察することが多いです。

機能障害

口腔は話す(構音)、食べる(摂食)、呼吸などの多くの機能を司っている重要な臓器です。器質的疾患などにより障害が生じることもありますが、運動機能や知覚機能の低下によりこれらに障害が生じることがあります。

摂食嚥下機能障害

摂食嚥下機能は食べ物や飲み物を口から取り込み飲み込む機能です。摂食嚥下機能は、食べ物や飲み物を認識する先行期から始まり、飲み込んで食道を通過するまでの一連の流れを言います。

1
先行期:目や鼻で食べ物を認知する
2
準備期:食べ物をかみ砕く
3
口腔期:食べ物を口からのどに送り込む
4
咽頭期:食べ物をのどから食道に送り込む
5
食道期:食べ物が食道を通過する

摂食嚥下障害は摂食嚥下機能のいずれかで生じた障害を言います。摂食嚥下障害が生じると、様々な影響が出てしまいます。

誤嚥性肺炎

通常、食べ物は食道に送り込まれます。何らかの原因んで食道ではなく、気道に流れてしまうと、肺に入ってしまいます。これを誤嚥と言います。
誤嚥すると、窒息してしまったり、細菌が入ると肺炎が生じます。
誤嚥によって生じた肺炎が誤嚥性肺炎と言います。
食べ物がのどに送り込まれたとき、通常嚥下反射がおきたり、気道に間違って入るとむせが生じます。しかし、摂食嚥下障害が生じると、この反射が鈍くなることがあります。特に高齢者になると、飲み込む反射が弱くなり、寝ているときなど、知らないうちに誤嚥していることがあります。このような無意識のうちに誤嚥してしまうことを不顕性誤嚥と言います。この不顕性誤嚥で肺炎が生じることが多いです。

低栄養・脱水

摂食嚥下障害が生じると、食べ物や水分が摂れなくなり、栄養状態が低下したり、脱水が生じます。このような状態は、さらに摂食嚥下障害を進行させるので、悪循環となり、生命の危機に陥ることがあります。

摂食嚥下障害の診断は、問診やご本人・ご家族から食事の様子を聴取し、簡単なスクリーニングを行ないます。その結果、精査が必要な場合は、嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査で検査を行ないます。

摂食嚥下障害と診断された場合、障害に合わせたリハビリテーションの指導を行います。また、食事形態の調整や食事姿勢の調整を行い、なるべく経口摂取できるようにします。

当院では摂食嚥下の専門外来を行なっています。
また、摂食嚥下機能の検査は外来でも行えますが、通院が困難な場合や食事の状態を観察する必要があったり、適切な食形態を選定する必要がある場合などは、嚥下検査入院も行なっています。

摂食嚥下外来のご案内

口腔機能低下症

口腔機能低下症は、加齢だけでなく、疾患や 障害など様々な要因によって、口腔の機能が複合的に低下していく疾患です。 放置していると、咀嚼障害、摂食嚥下障害など口腔の機能障害に陥り、低栄養やフレイル、 サルコペニアを進展させるなど全身の健康を損ないます。高齢者においては、う蝕や歯周病、義歯不適合などの口腔の要因に加えて、加齢や基礎疾患によっても口腔機能が低下しやすく、低栄養や廃用 、薬剤の副作用等によっても修飾されて複雑な病態を呈することが多いです。 そのため、個々の高齢者の生活環境や全身状態を見据えて 口腔機能を適切に管理する必要があります。

口腔機能低下症は、口腔衛生状態不良、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能低下、 嚥下機能低下の7項目のうち3項目以上該当した場合に診断されます。
当院では7項目すべての検査を行い、該当した場合は口腔機能低下症の管理を行なっています。

味覚障害

口腔内には味覚を感じる味細胞がたくさんあります。特に舌の表面は舌乳頭という突起があり、表面には味蕾という組織があります。この味蕾の中に味細胞があります。
味覚障害の原因には、放射線治療や化学療法などにより味細胞自体が障害してしまったり、口腔乾燥により唾液がなかったり、血液中の亜鉛欠乏など様々あります。
当院では、問診や口腔内診査、血液検査等を行ない、味覚障害の原因の検索を行ないます。原因が特定されれば、それに対する加療を行います。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に気道が狭くなることによって無呼吸状態を繰り返す病気です。症状が悪化することで良質な睡眠が妨げられ、日中の眠気やしびれなど、全身的な症状を呈することがあります。
診断には医療機関でのポリソムノグラフィー(PSG)などの検査が必要です。
治療法は上気道の閉塞を防ぐ陽圧呼吸(CPAP)などが行われますが、下顎を前方に出すようなマウスピースを装着することで、気道の閉塞を防ぐことができます。
当院でも、医科からの診療情報提供書をもとに、マウスピース治療を行うことが可能です。

その他

抜歯

残すことができない歯は抜歯が必要です。抜歯自体は一般歯科医院でも行なっていますが、顎骨内に深く埋まっていたり、全身的な疾患で、一般歯科医院では対応困難な場合など、ご紹介いただいて抜歯を行なっています。

埋伏歯抜歯

埋伏歯として多いのは智歯です。顎骨内に深く埋まっていたり、横に傾いて埋まっていたりすると、抜歯の難易度は高くなります。また、下顎の場合は神経と近接していたり、上顎の場合は上顎洞と近接していたりするため、リスクを伴います。
小児で多いのは過剰埋伏歯です。特に上顎正中部に多くみられます。上顎の中切歯間が離開していたりすると、過剰歯が埋まっていることがあります。年齢や本人が治療に協力的かで、場合によっては全身麻酔下で抜歯を行います。

全身疾患を伴う患者

脳卒中や心疾患がある場合は、抗血小板薬や抗凝固薬といった血が固まりにくくする薬剤を内服している場合があります。こういう場合、抜歯による出血のリスクが高まります。また、糖尿病や人工透析なども抜歯のリスクがあります。
当院ではかかりつけ医科と連携して抜歯を行なっています。場合によっては入院管理下で抜歯を行うことも可能です。

歯科治療恐怖症患者

歯科治療恐怖症の患者様は、抜歯に限らず歯科治療も困難なことが多いです。
当院では歯科治療恐怖の既往がある場合は、静脈鎮静下や全身麻酔下で抜歯を行なっています。

異常絞扼反射のある患者

異常絞扼反射がある患者様は、器具が口腔内に入るだけで吐き気が出たりします。智歯抜歯の際は、器具は喉の近くで操作します。この場合、局所麻酔だけでは困難なため、静脈鎮静下や全身麻酔下で抜歯を行なっています。

障害者

身体障害や精神疾患などの障害がある患者様は、意思の疎通が取りづらく、治療が困難なことがあります。このような場合は、静脈鎮静下や全身麻酔下で抜歯や一般歯科治療を行なっています。

歯科インプラント治療

歯科インプラント治療は抜歯などで歯が欠損した部位に、チタン製のインプラントを埋入し、人工の歯を作成する治療法です。
一般歯科医院でも行なっていますが、歯科インプラントを行なっていない歯科医院もあります。また、歯科インプラントは顎骨内に埋入するため、骨がない場合は骨造成の手術が必要になります。このような、自院では対応できない場合、当院に紹介していただき、歯科インプラント治療を行なっています。

1
2
3
4

周術期口腔機能管理

周術期口腔機能管理とは、がんなどに対し、全身麻酔で手術を行う場合や、化学療法、放射線治療を行う場合に、治療開始前より口腔内の管理を行うことをいいます。ここでいう口腔管理とは、口腔ケアだけでなく、感染源となる歯の抜歯や、動揺している歯の固定、義歯の調整なども行います。

手術による口腔合併症
  • 歯の損傷
  • 人工呼吸器関連肺炎
  • 術後感染症
がん化学療法による口腔合併症
  • 口腔粘膜炎
  • 口腔乾燥
  • 味覚障害
  • 口腔内出血
  • ウイルス感染症
  • 真菌感染症
口腔機能管理
  • 口腔ケア
  • 虫歯治療
  • 動揺歯の固定
  • 不良補綴物除去
  • 予後不良歯の抜歯
  • 義歯調整

治療開始前から口腔機能管理を行うことで、手術などの治療による合併症を予防することができ、治療の成功にも寄与します。

© 2023- TMGあさか医療センター 歯科口腔外科