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【コラム】夜尿

最近の知見

「焦らす、怒らず、ほめる、比べない」

・医学的に夜尿症というのはどのように定義されていますか?

夜尿(いわゆるおねしょ)はありふれたこどもの症状でこどもの成長とともになくなっていく現象のことです。「夜尿症」は「5歳以上の小児の就寝中の間欠的尿失禁」と定義されています。5歳でも20%ぐらいの子供たちに夜尿が認められますが、夜尿のすべてを病気としてとらえるのではなく、一般生活の中で様々な不具合を生じた場合に夜尿を治療対象として「夜尿症」と診断します。

 

・人間は起きているときは2時間に1度くらい尿を出しますが、夜に寝ているときは、何時間も尿が出ません。それはなぜでしょうか?

日中の活動時と睡眠時とで、尿の生成および膀胱のメカニズムが異なります。日中に尿意を感じた時に人は、排尿を一時的にがまんし周囲の状況にあわせて適切な時間に適切な場所で排尿するということが可能です。排尿行為は社会生活を維持するための非常に高度な行いの一つです。一方、夜間は十分な睡眠を確保するために、脳より血中にホルモンが分泌され腎臓での尿の生成が抑えられます。また、睡眠中は一定量の尿が膀胱にたまった場合に膀胱が弛緩し尿意を催さないようになっています。安眠を確保するための人が身に着けたメカニズムと考えられます。

 

・夜尿をする人としない人がでるのはなぜですか?

夜尿は多くの場合4歳頃までになくなります。5歳では5人に一人、10歳でも20人に一人ぐらい認めます。すべての夜尿が病気とは限りません。遺伝的な要因や本人の成長過程で多くの人と比べて遅く夜尿が消失することもあります。しかしながら、何かしらの原因で、夜間に分泌される尿の生成を抑えるホルモンの働きが少ない、年齢に併せて膀胱の容量も大きくなるべきところが膀胱が十分に成長していないなどのことがあると、夜間の尿が膀胱容量よりも多くなり結果として夜尿を認めてしまいます。

また、夜尿症と診断されたこどもの10%程度に外科的治療が必要な病気が隠れていることにも注意が必要です。

最近では、全国的に宿泊行事が幼稚園から小学校低学年でも始まることも珍しくなくなってきました。それに伴って夜尿が続いている子供とその家庭では宿泊行事への参加に躊躇するケースも増えています。宿泊行事をどう無事にのりこえていくかが大きなストレスとなっています。いつかは自然に治ることが多いと考える方も多いかもしれませんが、治療を開始することで夜尿をコントロールしそのような負担を取り除くことも可能です。そこで我々専門家は、5歳以上で夜尿が続く子供は一度相談もしくは受診するように奨励しています。

 

・夜尿をしないために寝る前に水分を取らない方がよいのでしょうか?

夜尿の原因に過剰な水分摂取があります。人により水分摂取のコントロールを行うのは難しい場合もあります。また、小さな子供に、夜尿をしないためにむやみに水分制限をさせることは、夏のシーズンでは熱中症の原因となりますのでお勧めしません。まず、夜尿症の治療の第一の目標は夜尿をコントロールできるようにすることです。どうしても今晩は夜尿が無いようにしたいのであれば、やみくもに水分制限をするのではなく、その日はスープや牛乳などの濃い飲み物は避け、夕食後から寝るまではコップ一杯程度の水に制限する程度で良いと思われます。

 

・夜尿を防ぐ方法には他にどんな方法がありますか?

就寝前にきちんとトイレに行く、夜間にお腹が冷えないよう腹巻をするなどがあります。そのほか、夜尿の原因で見逃されがちなことに便秘があります。硬い骨に囲まれた狭い骨盤内には膀胱と直腸が隣どうしで同居しています。直腸に便が常に貯まっていると、骨盤内は限られた空間であるため便が膀胱を圧迫します。夜間就寝中に膀胱に少しでも圧迫刺激が起こると、膀胱が収縮し膀胱内の尿が容易に漏れ出してしまいます。毎日きちんと排便があると思っている方の中でも意外と便がたまっている人が多くいます。便秘の治療も夜尿症の治療のひとつです。

また、睡眠中の意識を向上させ、睡眠中に尿意を感じるようにする方法もあります。私の外来では家庭内で積極的に夢の話をしてもらうようにしています。夢を意識できるようになると自然に夜尿がなくなるケースを数多く経験しています。

 

・医学的に夜尿の治療法というのが確立されていますか?

1回の診察で夜尿を治癒させることも時には経験しますが、多くの場合、治療に短くても数カ月は必要です。まずは生活指導と合わせて、夜間の尿量と膀胱の容量の測定を行います。夜間の尿量が多いと判断された場合は、尿の生成を抑える薬を処方します。膀胱容量が年齢よりも小さいと判断した場合は、膀胱の収縮を抑える膀胱弛緩薬(抗コリン薬など)を処方します。

 

・最後に

むかしからおねしょを性格や育て方に関連付けることがありましたが、精神論や根性論でどうにかなるものではありません。大切なことは、本人の治そうとする意欲と、家庭の協力が大事です。「焦らす、怒らず、ほめる、比べない」です。